ゼロ「俺の『力』は『信念』だからだ」
2009年9月16日 コラム■FW出身ながら徹底した守備組織を構築我らが清水エスパルスを5年もの長期に亘って指揮を執ってる長谷川健太監督。
サッカーどころ静岡。その象徴たる清水エスパルスで指揮を執るということは、並大抵のプレシャーではない。それを5年間続けているのが長谷川健太監督だ。
就任1年目の2005年こそ残留争いに巻き込まれ15位と低迷したが、その後の3シーズンで、4位、4位、5位と清水を上位争いできるチームへと作り変えた。また、就任1年目の天皇杯では準優勝へと導き、4年目に当たる昨年はナビスコカップで準優勝になるなど、しっかりと成果を残している。そして、今季もナビスコカップは準決勝で敗退したもののベスト4入りを決め、リーグ戦では2位の川崎と勝ち点3差の4位につけるなど躍進を続けている。
1つのチームで長期政権を任され、結果を出し続ける――。言葉にするのは簡単だが、これを実践するのはなかなか難しい。しかし、長谷川監督は清水の監督に就任してから5年、2年目以降は毎年チームを上位に押し上げることに成功している。その秘訣(ひけつ)はどこにあるのだろうか。
まずは徹底した守備組織の構築にある。事実、長谷川監督も「守備はベース。できなければ試合にならない」と言い切る。現役時代はFWとして日本代表にまで上り詰めたほどの実力者。しかし、指導者になってからは一貫して守備のタスクをチームに落とし込んだ。
例えば、北京五輪代表として活躍した本田拓也。2008年、期待の若手として法政大学から鳴り物入りで加入したが、開幕以降、徐々に出番を減らしていった。誰もが即戦力と思っていた矢先の出来事だ。しかし、そのとき本田はこう漏らした。「あまりボールに食いつくなって言われるんです」。
清水は他チームと違って、やや特異な守備をする。守備時の4バックは割と低いポジションを取り、ボランチも中に絞って相手のサイド攻撃に対し積極的には食らいつかない。サイドバックも縦を切って攻撃するスペースを埋める。そうやって、自陣ゴール前に堅牢なブロックを作る。スペースを埋め、ディフェンスラインの裏を突かれてクロスを上げさせないことを第一の目的としている。
だから、相手が浅い位置からクロスを入れようとするならば、あえて上げさせる。そして、中で構えるセンターバックがFWにしっかり体を当てて競り、跳ね返す。このこぼれ球に対しては、ボランチを含めた中盤がしっかり拾って、そこから一気に攻撃へとつなげる。簡単な言葉で説明すれば、「堅守速攻」のスタイルとなる(長谷川監督は「引いて守ってカウンター」という言葉を嫌うが……)。
■攻撃に変化を加えても根幹は変わらない
もちろん、このやり方を押し通せるのも、センターバックに高さと強さのある選手、青山直晃や岩下敬輔がいて、サイドバックにも市川大祐、児玉新といった中に絞ってセンターバック的な役割もこなせる人材がそろっているからこそ。そのため、被クロス数が多くても中央で跳ね返す確率が高く、DFの頭上からシュートを打たれる可能性は低い。
また、守備時に態勢が整っていなければ、ボール奪取能力に長けたボランチでも無理に相手を追うことはしない。1対1でかわされ、中に切れ込まれてミドルシュートを打たれるリスクを回避すべく、中央を固めて、そこから外へ外へと追い出すのが清水のディフェンスだ。確かに、「クロスを入れられるというのはマイナスのイメージがある」(市川)。だが、中央でしっかり跳ね返せる力があり、それを実践できる選手がそろっていることもまた清水の強みである。
以上が長谷川監督の考える効率的な守備である。過去4シーズンを振り返ってみても、失点は比較的少ない。長谷川監督の考える守備システムは間違っていなかったということなのだろう。
攻撃に関しては、これまでさまざまなトライを重ねている。例えば、これまでの5年間で長谷川監督は幾つかのシステムを使い分けてきたが、最終的には2つのシステムに落ち着いた。
1つはトップ下を置いた4-4-2のダイヤモンド型、もう1つはダブルボランチを置いた4-4-2のボックス型。特に昨季終盤くらいから、対戦相手やチーム状態によってシステムを使い分ける幅広い戦い方をしてきた。これは今季に入ってからも継続されているが、柔軟なシステム変更ができることによって、接戦の試合をものにすることができる。つまり、1点ビハインドの試合(勝ち点0)を、引き分け(勝ち点1)に持ち込むことによって、勝ち点を少しずつでも積み重ねる。そうすることで、しっかりと上位争いに絡むことができている。
その柔軟なシステム変更を可能にしているのも、やはり守備のベースがあってこそ。安定感のある守備のおかげで、前線の組み合わせも柔軟に変えることができる。
今季の序盤戦は、2トップにヨンセンと原一樹、そして日本代表の岡崎慎司を中盤で起用する変則3トップシステムを採用した。やや攻撃に比重が置かれたメンバー構成ではあるが、守備の決まり事さえしっかりできていればチームとしてのスタイルは変わらない。むしろ、守備の安定感があるからこそ、攻撃でちょっとしたデコレーションを加えても、チームの根幹は揺らがないという。そうした自信があるからこそ、攻撃でも思い切ったトライができるのだろう。
■昨季の鹿島戦を境にリアリストへ
柔軟性という点に関して言えば、2008シーズンに長谷川監督の中で、サッカーに対する考え方に変化が生じたことが大きい。就任して3年目までは、どちらかと言えば、自分の美学やこだわりを貫き通していたが、この年の終盤戦では、自分たちの戦い方を押し通すのではなく、相手に合わせた戦い方をするシーンが見られるようになった。それは、ある試合を境に変化した。
そのきっかけとなったのは08年のナビスコカップ準決勝の鹿島アントラーズ戦だ。当時、主力にけが人が多くベストメンバーをそろえることのできなかった清水は、第1戦のアウエーで4-4-1-1という超守備的な布陣で挑んだ。サイドバックはもちろん、サイドハーフも相手陣内に攻め上がるシーンはほとんどなく、8~9人でブロックを作り守備に重点を置いたゲームプランを選択した。
その結果、見事90分間を無失点で乗り切って第2戦につなげることができたのだが、試合後は相手チームからも相当な批判があった。だが、長谷川監督はその批判を甘んじて受けた。
迎えた第2戦、ホームではシステムをダイヤモンド型の4-4-2に変更。超守備的なシステムから、バランスの取れた普段のスタイルに戻した。その結果、2-1で鹿島を打ち破ることに成功。と同時に、このホーム&アウエーの2試合を通じて、長谷川監督が勝利に徹するリアリスト(現実主義者)になった瞬間でもあった。シーズン終了後、監督自身が「柔軟に、勝つために、勝ち点3を取るために、じゃあ何をしなければいけないのかというところで考えました。あまり固執してというよりも、自分自身で何を求めるかじゃないですかね。プライドというか、変なこだわりを捨てられるかどうかだと思います」と振り返ったことからも、この一戦が長谷川監督の指導者としての大きな転機となったことは間違いない。
この鹿島戦以降、理想を追い求めるだけでなく、時には相手のスタイルに対応してでもリアルに勝利を求めるという柔軟なさい配に変わった。
今季の清水は、相手のストロングポイントを抑えて弱点を突く試合をしたかと思えば、自分たちのサッカーを押し通すなど柔軟な試合運びができている。当然、ホームかアウエーかという点も戦い方に影響を与えているだろう。相手に合わせるということは、入念なスカウティングがベースにあって初めてなせる業だが、今季の長谷川監督は実戦における“使い分け”がさらに切れを増した印象を受ける。
■念願のタイトル奪取に向け下地はそろった
「強いチームには形が絶対にある。だから、まずは清水エスパルスの形を作らないといけない」という理念を持っていた長谷川監督。その“形”を作るために、就任1年目から組織的な守備作りに取り組んで、スタイルの構築はできた。
しかし、サッカーは対戦相手があってのもの。自分たちのスタイルを押し通したとしても、常に思い通りの戦い方ができるわけではない。そうした場合、どんな状況になっても試合に勝つためには、臨機応変に対応できる柔軟な頭を持たなければいけない。指揮官は経験からそう悟った。勝利を得るための柔軟な思考、長谷川監督のそうした精神的成長もチームの力として大きな財産となっている。
指揮官の熱意は選手たちにも十分、浸透している。長谷川監督の就任以後、若い選手が着実に力をつけてきた。GK山本海人、DF青山、岩下、MF本田、枝村匠馬、山本真希、原、岡崎といった、いわゆる北京五輪世代(85~87年生まれ)の台頭がチームの力を押し上げている。彼らの多くはレギュラーポジションをつかんでいるが、その成長は、若手を積極的に起用してきた監督の功績でもある。
その長谷川監督の契約も、今季で最終年を迎えた。現体制5年目となる今季、清水は長谷川監督の指導の下、自分たちの形=堅守、充実した戦力=若手の台頭という力を手に入れた。また、何よりも指揮官自身がリアリスト=勝負に徹した柔軟なさい配を振るうという大きな成長を遂げた。念願だったタイトル奪取へ向け、いよいよ下地がそろったと言ってよさそうだ。
前述したように、残念ながらナビスコカップはすでに敗退が決定しているが、リーグ戦はまだ10試合ある。残り10試合を超リアリストに徹して戦い抜けば、長谷川監督の集大成の年として最も大きな成果を得ることができるかもしれない。
清水を変えた監督、長谷川健太の信念 堅守を築き上げたリアリスト
http://sportsnavi.yahoo.co.jp/soccer/jleague/2009/text/200909110001-spnavi_2.html
http://sportsnavi.yahoo.co.jp/soccer/jleague/2009/text/200909110001-spnavi.html
自身も現役では清水以外のチームでプレーしたことは無く、伊東輝悦に次ぐ「清水を知り尽くした男」と云えよう。
元々清水は守りは堅いほうだが、それを更に磨きあげたのが現在のチームだ。
点を取られなければ負けはしない、と云うことなのか、引分数はリーグ一多いし、失点数の少なさもトップクラスだ。
ケンタ監督はカウンターと云うのは好きじゃないみたいだが‥。
ケンタ監督の指揮官としての考え方は、俺も学ぶべきものがある。
特に‥
「柔軟に、勝つために、勝ち点3を取るために、じゃあ何をしなければいけないのかというところで考えました。あまり固執してというよりも、自分自身で何を求めるかじゃないですかね。プライドというか、変なこだわりを捨てられるかどうかだと思います」
現在(直近)の状況を分析し、それに柔軟に対応していく。
色々と結構ワンパターンになってきてるから、固執してると云えなくもないな。
新店に応援に行く機会も増えるので、変革を考えるのにはちょうどいいかもしれん。
今年で任期満了となるケンタ監督。
「優勝」と云う有終の美で飾り、来年以降も続投されることを願う。
中央21-8 ・ 80/80
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