アムロ「次に会う時は、敵同士かもな」
2010年11月20日 スポーツ「私の決断ではなく会社(フロント)の判断。悔しい思いがたくさんある」グランパスが優勝を決めたにもかかわらず、全く空気読まない話です。
上記は、フロントから今シーズン限りの監督退任を告げられた直後の清水・長谷川健太監督の言葉です。
監督だけではありません。田坂和昭などの現コーチ陣も総退陣になることが既に正式決定されています。また、これまでチームを支えてきた伊東輝悦・市川大祐・西部洋平といったベテラン選手達も軒並みで戦力外となると報道されています。
長谷川氏は2005年に、当時成績が低迷していた清水の監督に就任。それから足掛け6年、チームをリーグ優勝争いできるだけの地位まで引き上げてきたわけであり、その功績にはむろん、コーチ陣・選手達の努力もあったわけで、
それだけに、このフロントの決断を思い切ったものと言うべきか、乱暴なものと言うべきか、この時点で選別するのは非常に難しいことです。が、この試合での選手達の姿、彼等の精神的コンディション・モチベーションの安定度を見ることで、今後の清水の成否を占うことはできるでしょう。
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<仙台・スターティングメンバー>
FW 中原貴之 赤嶺真吾
MF 梁勇基 太田吉彰
斉藤大介 永井篤志
DF 朴柱成 鎌田次郎 渡辺広大 菅井直樹
GK 林卓人
<清水・スターティングメンバー>
FW 岡崎慎司 ヨンセン
MF 兵働昭弘 藤本淳吾
本田拓也 伊東輝悦
DF 児玉新 平岡康裕 岩下敬輔 辻尾真二
GK 西部洋平
清水は3日前に天皇杯を戦ったばかりであり、小野伸二をベンチで休ませています。今季の清水は、こういったターンオーバー・有給休暇制度(?)を積極的に採用しています。
その一方、チーム最高齢のヨンセンについては、小野とは逆に天皇杯を休ませ、この試合に万全の状態で臨ませていました。
この試合の会場である仙台・ユアテックスタジアムの芝はかなり荒れています。この状況で試合開始からパスをつなぐサッカーを展開していくのはかなり難しいことです。ということで、この日の清水は意識的に長いボールを使った攻撃を主体としていきました。
この戦術で最重要な選手は当然、ポストプレーに長けたヨンセンであり、短いパスをつなぎながらリズムを作る選手である小野伸二については、無理な起用をするまでの意味は無かった、恐らくそういうことでしょう。
一方の仙台は、前節磐田に快勝したときのメンバーと変更なし。この試合に勝ってJ1残留を確定させておきたい立場です。
ところで仙台は、この荒れたピッチのスタジアムで、リーグ戦5連勝中ということです。彼等の武器は高い位置でボールを奪ってのカウンター攻撃ですが、荒れたピッチの方が相手のパスミスを誘いやすいという側面もあるのかもしれません。
ただ、この日の相手である清水は、先述のとおりロングボール攻撃を主体にしてきましたので、仙台にとっては、高い位置でボールを奪い辛い側面があったのですが、
それでも、ポスト役のヨンセンに対してロングボールをしっかりと競り合い、セカンドボールの拾いに集中して、そこからのカウンター攻撃を仕掛けていきました。
前半14分。ヨンセンのポストプレーからのセカンドボールを仙台・朴柱成がしっかりと拾って、前線に長いボールを送ります。
これを仙台のポストプレーヤー・中原貴之が落として、太田吉彰が右サイドを突破してセンタリング。これはFWの赤嶺真吾に僅かに合わず、ボールはファーサイドに流れますが、これを朴柱成が拾って再度センタリング。
これを赤嶺が相手DFと競り合ってこぼれたボールを、菅井直樹がフリーの状態でヘディングシュート。これは相手GKが至近距離で弾きますが、菅井はそのこぼれ球に喰らい付くようにしてボールをゴールネットに押し込みます。
右サイドバックの菅井が最前線までオーバーラップしてのゴール。この選手のこういったゴールはJ2時代から何度も見ているのですが、どうすればあのような良い位置取りができるのか、赤嶺が競ったボールがここに来ると最初からわかっていたようなポジショニングでした。不思議にして、センス溢れる選手だと改めて思います。
【仙台 1×0 清水】
かたや清水は、先攻されてもやり方を変えることなく、ヨンセンや岡崎慎司目掛けてのロングフィードを延々と続けていきます。それ以外の局面で、選手が積極的にスペースに走ってボールを受けようとする動きがあまりありません。
ここで筆者は、清水サポでもないのに不安になりました(笑)。監督退任のフロントの判断は、やはり清水の選手の精神的コンディションに悪影響を与えているのではないかと。
しかし前半29分、筆者の不安は杞憂に終わり、清水は同点に追いつきます。
ヨンセン・岡崎慎司のポストプレーから、左サイドのアタッキングゾーンでのスローインを得て、その位置を起点に本田拓也がアーリークロスを配球。
これを相手DFに競り勝った岡崎が決定的なヘディングシュート。これは惜しくもポストに弾き返されますが、跳ね返りに鋭く反応した清水・藤本淳吾がシュートを狙います。
これに仙台・朴柱成はたまらず、藤本を押し倒してしまいます。主審の判定は当然PK、しかも朴柱成に対してレッドカード(退場)の厳しい処分。PKは藤本が難なく決めました。
このシーンまでの清水は、シュートシーンさえ殆ど作れていなかったのですが、一度の決定機を生かして同点に追いつきました。
ポストプレーを主体に、相手に対して高さで優位に立てる状況では、さほど数多くシュートシーンを作らずとも、少ない決定機でも得点できる可能性が高いことを最初から計算していたのでしょう。自らの強みを嫌らしいほど前面に出したゴールだったと思います。
【仙台 1×1 清水】
一方、仙台にとっては、同点に追いつかれたことはともかく、退場選手が出たことは大きな誤算でした。
カウンター攻撃のベースとなる仙台の守備は、10人のフィールドプレーヤー全員が、FWも例外なく守備ブロックに参加することが前提になっています。
その前提が崩れた状態で、どこでボールを奪っていくのか、どこで相手にきついプレッシャーを仕掛けていくのか、一切の決断が曖昧になって、やがて仙台のDFラインがずるずると下がっていきます。
そんな前半ロスタイムの清水の攻撃。岡崎のポストプレーからのボールをヨンセンが収めて、左サイドを駆ける兵働昭弘に展開。しかし兵働は相手守備陣2人がチャレンジ&カバーの態勢をしっかり敷いているのを見て突破を諦め、中央のヨンセンにリターンパスします。
このパスを受けたヨンセンの眼前には仙台・渡辺広大が立ちはだかり、その両脇も仙台の選手がカバーの体勢に入っていました。この状況なら渡辺は、ヨンセンとボールに強いプレッシャーを仕掛けていっても何の問題もありませんし、そうすべきでした。しかし、退場選手が出て動揺していた渡辺と仙台の選手達にできたことは、ヨンセンのシュートコースを潰すことのみでした。
結局、ヨンセンは無理せずにボールを藤本に横パス。その後も仙台は清水攻撃陣に自由にボールを動かされて、最後は左サイドからのクロス。このこぼれ球を、藤本の高い技術でもってゴールネットに流し込まれてしまいました。
【仙台 1×2 清水】
ハーフタイムを挟んで、やや冷静になった後半の仙台は、数的不利の状態ながら、懸命に走って相手にプレッシャーを仕掛け、何とかボールを奪ってショートカウンターの局面に持ち込もうとしていきます。
しかし、清水はその仙台の思惑に乗りません。荒れたピッチの中にもかかわらず、冷静にボールをさばいて、ボール支配を続け、相手のショートカウンター攻撃の起点となるようなゾーンでは決してミスをしません。
そして88分。仙台はCK(コーナーキック)のシーンで、GK林卓人を前線に上げますが、ギャンブルは外れて清水・大前元紀のドリブル独走を許し、決定的な3点目が生まれました。
【仙台 1×3 清水 試合終了】
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仙台は、良く言えばピュアな、悪く言えば幼さが出たような試合を演じてしまいました。
まず、朴柱成の退場シーンについては、あれが後半ロスタイムの時間だったらともかく、前半ではやってはいけないプレーだったと言わざるを得ません。
また、3失点目の起点となった林の攻撃参加にしても、選手全員が攻撃参加するならともかく、フィールドプレーヤー2人を後方に残しながら、GKだけがゴールマウスを空けての攻撃参加でしたから、意図が不明瞭なものでした。あれなら、林をGK兼スイーパーの役目にして、他のフィールドプレーヤーを攻撃参加させておいた方が良かったでしょう。
仙台はこの試合、数的不利の状況ながら、選手達はよく走っていましたし、闘う気持ちを前面に出していました。それがこのチームの強みでもあるのでしょうが、それが上記の、冷静な判断を欠いたシーンにつながっているようにも感じました。
一方の清水は、冷静にゲームプランを遂行して、順当に勝ち点3を得ました。
その姿は仙台とは対照的で、「大人」の雰囲気を漂わせる試合運びだったと思います。
ただ、よくよく考えてみれば、ほんの数年前までの清水は、仙台のようなチームだったことを思い出します。
当時は、長谷川監督も、兵働・藤本・岡崎のような主力選手達もまだ経験が浅く、相手を上回れるものは気迫と運動量だけだ、という試合を続けていましたが、
しかし、年月を経て、監督も選手達も成長して、リーグの優勝争いを演じれるところまで成長してきましたし、今日のように冷静で、良い意味で「相手を呑んで」かかる試合運びもできるようになってきました。
清水フロントの「大変革」の判断が正しいものかどうか、現時点ではわかりません。
ただ、後に残された選手達は、既に経験と成長を重ねた「一人前」の人間ばかりであり、
今の選手達なら多少の変革でも耐えることが出来るだろうし、変化をステップアップに変える度量も備えているはずだと、そう見定めた上でのフロントの「決断」だったように、筆者は感じました。
ベガルタ仙台 1×3 清水エスパルス (2010年度J1リーグ第31節 仙台)
http://www.plus-blog.sportsnavi.com/niko0730/article/42
劣勢に追い込まれながらも、たったワンシーンで流れが変わってしまう典型的な話だ。
と云うか、前半に1発レッドって‥。
こうして逆転勝利を収めたものの、記事に書いてあるとおり色々不安はある。
伊藤・市川・ヨンセンの退団は以前も書いたが、さらに西部・藤本までもがチームを去るみたい。
現在岡崎と並んでチームトップの得点を挙げてる藤本や、5節でのPK阻止が鮮烈な西部まで‥。
他チームからの移籍次第だが、本当に来年どうなるんだろう‥。
この大変革が凶と出ない事を切に願う。
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