ドップラー「解雇‥ですか‥」
2010年12月27日 コラム■タイトル獲得はならなかったが、残した功績は大きいフロントは変革の時期だと云ってた。
10月31日、全国紙の朝刊に「今季限りで長谷川監督が退任」という一報が打たれた。前日の30日、清水エスパルスは台風の中、ホームのアウトソーシングスタジアムでFC東京と対戦した。しかし、相手に先制を許すといいところなく1-2で敗戦。「監督退任」の報が流れたのはその翌日のことだった。
この日、クラブはオフに入っていたため、11月1日、月曜日の朝になって初めてクラブから、「長谷川健太監督 今シーズン限りでの退任のお知らせ」と正式なリリースが出され、やや遅れてではあるが、コーチングスタッフの退任も決まった。バタバタ騒ぎが続く中、選手たちには、練習が行われる前に早川巖社長自ら説明が行われた。これにより、6年にわたる長谷川政権は今シーズンいっぱいで幕を閉じることとなった。
そして、そこからは主力選手の来季の契約延長なしの話など、過熱気味の報道が先行。リーグ戦6試合を残して、清水エスパルスは喧騒(けんそう)の中へとのみ込まれた。
就任1年目こそ残留争いからスタートしたが、そのシーズンの天皇杯では準優勝。長谷川監督は、若手選手の育成に力を入れ、現在のチームの軸となる選手たちを育て上げた。FW出身の選手でありながら緻密な守備戦術を徹底し、ゴール前に人数をかけブロックを作る方法で堅守を構築すると、それが功を奏し、リーグ戦、カップ戦問わず好成績を残すことに成功した。2010年には、ドイツから帰国した小野伸二を獲得し、攻撃的な4-3-3システムを採用。今季こそタイトル奪取を……と気合いを入れて挑んだのだが、過密日程による選手の疲労やけが人の続出などもあって、成績は徐々に下降し、またしてもタイトルには手が届かないシーズンとなった。
しかし、過去5年を振り返ると、タイトル獲得はならなかったが、長谷川監督が残した功績は大きい。特に若手の育成に関しては輝かしい限りだ。就任以後、日本代表に選ばれた選手は候補も含めると、岡崎慎司、藤本淳吾、本田拓也、山本海人、青山直晃、岩下敬輔、太田宏介ら多数に上る。つまり長谷川監督は、これからの清水を背負って立つ若い世代を育て、チームのベースを築いてきたのだ。それだけに、今シーズン限りでの退任は残念でならない。
■これ以上の上積みを計算できないと判断
ともあれ、クラブは長谷川政権という一時代に区切りを付けることを選択した。長谷川監督との契約を延長しなかった理由はいくつかあるが、最大の理由は、指揮を執った6年の間(現時点まで)に1つのタイトルも獲得できていないことだろう。もともと、05年の就任時は3年契約でのスタートだった。しかし、初年度こそ15位に終わったが、06年、07年は4位となり契約は2年延長された。そして、08年にはナビスコカップ準優勝、09年に初のリーグ戦首位という結果を残したことでさらに1年の契約延長に至った。
しかし、クラブはこれ以上の上積みを計算できないと判断。現状をキープするのではなく、次のステップに進むことを選択した。
「もともとの3年+2年で1つの区切りとして考えると、今年はオプションの1年。『(監督)本人も結果で評価してほしい』と言っていた。また、サッカー的にも次のステップに入っていかなければいけない」と望月達也強化部長も、長谷川監督との契約延長に至らなかった経緯を語っている。
クラブ側も決して長谷川監督の功績を評価していないわけではない。ただし、これまでタイトルを獲得できなかった理由、原因が必ずあり、そうしたものを克服していくためには改革が必要という考えが根底にある。
■外国人監督を招へいする方向
次期監督候補には、現イラン代表監督のアフシン・クォトビ氏や元サウジアラビア代表監督のヘラルト・ファンデレム氏などの名前がすでに新聞各紙に挙がっている。
望月強化部長は、「今、名前は出せない」とこうした報道に関しては否定も肯定もしていないが、「アジアや世界を見られる人、グローバルな経験を持っている人。サッカー的には自分たちでアクションができる。そういうスタイルの人を考えている」(同望月強化部長)と、すでに条件に合う指導者を何名かリストアップしていることを認めている。報道にあったように、日本人監督ではなく外国から監督を招へいするという方向は間違いないだろう。
また、監督人事と同様に主力選手の契約に関しても、クラブのこれからのビジョンが大きく反映されていることが分かる。すでに報じられているように、ヨンセン、伊東輝悦、市川大祐、西部洋平とは来季の契約が結ばれないことが決まっている。単純に高額年俸の選手が順番に切られている印象を受けるが、「決してそうではない」と望月強化部長は言う。
言葉の真意はこうだ。単純に今季1年のパフォーマンス、成績だけを見て決めたのではなく、過去数年の内容を踏まえて決断を下した。その結果、契約をしないという。確かに、けがや若手の台頭によって、先に名前が挙がった選手たちは絶対的なレギュラーではなかったかもしれない。例えば、昨年の終盤は正GKを山本海人が務めていた時期があるし、今年は右サイドバックのレギュラーを辻尾真二が奪ったこともある。また、ボランチに関しては本田の台頭によって今年は、伊東の出番が減ってきている。ヨンセンにしても、期待された2ケタ得点は2年連続で達成できていない。そこに「ノンタイトル」という重りがついてくる。
そう考えると、緩やかではあるが、在籍メンバーを入れ替える時期、変化の時期に来ているのかもしれない。放出リストに挙がっている選手の名前だけを聞けば、生え抜きのベテラン選手も居てかなりショッキングな出来事だが、シビアな言い方をすればクラブは名よりも実を取ったと判断したということになる。
また下世話な話かもしれないが、ヨンセン、伊東、市川、西部、青山(ゼロ円提示ではないが、すでに移籍が報道されている)を含めた5選手の年俸や、そのほかにかかわる経費を計算すると軽く見積もっても総額では億単位での経費が圧縮できるのも事実だ。同じ力があるなら、安くて若い将来性のある選手を使う。それが結果的にドラスティックに見えることもある。その理論は、ある側面からすれば間違っていないし、プロの門をたたくとき、「この世界は決して甘くないぞ」と誰しもが言われて飛び込んできたのだ。それだけに、結果(記録、契約)がプロの世界ではすべてだということくらい、選手たち本人が一番理解しているはずだろう。
■近い将来、有望な即戦力候補の加入も
では、これから先、清水はどこへ向かって行くのだろうか。
先の記述にもあるように、クラブは世界、アジアを見据えた監督人事を進めており、チームとしては日本だけに収まらず、次のステップアップのために踏み出そうと考えていることは間違いない。AFCチャンピオンズリーグ出場はもちろん、タイトルの取れるチーム作りを目指す。
選手の人事に関しても、在籍する若い選手の成長や、選手の発掘に自信を持っているからこそ、こうした血の入れ替えに踏み切れたものと考えられる。昨年から今年にかけ、清水の練習に参加している大学生には、河井陽介、藤田息吹(共に慶應大学)、六平光成(中央大学)、八反田康平、瀬沼優司(共に筑波大学)といった、他クラブがうらやむほどの即戦力候補となるメンバーがそろっている。すでに彼らの大半はアンダー世代で日本代表を験者しており、実力も十分。順調にいけば、近年中にこうした有望な新人選手たちも入団してくるはずだ。となれば、数年後から先の大まかなメンバー構成、チームの戦力バランスやビジョンも描きやすい。
こうした状況は、例えるなら数年前に、兵働昭弘、藤本、本田といった大学生の即戦力クラスの連続して獲得し、主力に育て上げてきたころと似ている。以前と比べれば、チームの実力がついたこともあり、「エスパルスでプレーしたい」という選手も増えてきている。最近はアマチュア選手の獲得市場でも有利な立場にいると言ってもいいのではないだろうか。また、ベテラン選手と契約更新しないことで浮いた余剰金もあり、足りないポジションでは外国人選手を含めた補強も視野に入れているはずだ。
このような背景もあって、今回ドラスティックな監督人事、選手の契約更改が推し進められたのだろう。すでにチームは新たなプランに向かって、大きな一歩を踏み出した。
もっとも、2010年シーズンはまだ終わったわけではない。リーグ戦は5試合あり、念願のタイトル獲得に関しても天皇杯でその可能性を残している。退団の決まっている市川も「1試合でも長く、みんなと同じオレンジのユニホームを着てプレーしたい。タイトルを取って終わることができればうれしい」と、すでに気持ちを切り替え、試合に集中している。長谷川監督も「最後まで全力を出して戦う」と宣言した。
これは何も去っていく選手たち、退任する監督だけの気持ちではない。残留する選手たちも、「勝ち続けることが恩返し」(兵働)と、このチームで最後までしっかりやり遂げたいという思いは皆変わらない。残された時間は少ないかもしれない。しかし、彼らは悔いのないよう、今シーズンを全力で走り抜けようと、それぞれ心に誓っている。長谷川監督の下で一緒に戦ってきた6年間の証しを残すために。
清水の決断、長谷川監督退任が意味するもの 現状維持ではなく次のステップへ
http://sportsnavi.yahoo.co.jp/soccer/jleague/2010/text/201011080002-spnavi.html
確かにケンタ監督は今期後半の戦跡だけ見ればJ2落ちするような内容だったから仕方ないかもしれん。
就任1年目こそ15位とJ2落ちギリギリだったが、その後はコンスタントに上位に進出できるチームになって来た。
当時まだ新人だった兵働・枝村・岡崎・辻尾・本田・青山と云った選手をココまで育て上げた功績は大きすぎる。
ただ、それでタイトルが取れてないのもまた事実。
結果、ケンタ監督は「新人を育てるのは上手いが、タイトルは取れない」監督と云うことになってしまう。
そう云う結果なのだから、それはそれで受け入れなければならない。
しかし、それと主力選手の放出は同じと考えていいのだろうか?
藤本・岡崎・ヨンセン・伊東・市川・西部・青山と云った書くとも云える選手を放出するのは‥。
もっとも、前者2人は戦力外通告を受けたわけではなく、自らの意思で移籍するわけだが。
タイトルを狙えるチームを作ると云っておきながら主力を放出するチーム。
えらく矛盾した話だ。
高原の他にも新戦力は期待できるが、いったい来期どうなっていくのだろうか?
その前に明後日の天皇杯準決勝。
ケンタ監督の有終の美を飾るには、こんな所で負けてはいられない。
最終節で0-3で負けた借りを返してやろう。
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